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美ヶ原トレイルラン&ウォークinながわに参加してきました

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これまで出た大会の中でも最長距離となる、美ヶ原トレイルラン80kmに参加してきました。
なぜ「参加した」と書くかというと、走りきれなかったからです。初めてのリタイアになりました。
詳しい経緯は順番に。

例によって美ヶ原への想いから

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美ヶ原といえば、登山の山というよりも、まずサイクリングの行き先、というイメージが強いです。
美ヶ原を通るビーナスラインは、日本の中でもトップ1,2を争う名サイクリングルートだと思います。
最初に通ったのは、確か大学2回生の夏合宿(近藤班)で鹿児島から猪苗代湖まで走った時だったと思いますが、その後もツール・ド・信州では、唯一10年間連続で通った道であり、その下見と本番だけでも20回は通っています。
ドライブに来たことも何度もあり、恐らく30回以上はビーナスラインに来ているのではないかと思います。
ちょうど信州の真ん中にあり、北アルプス八ヶ岳南アルプスに富士山と、四方の山々が見渡せる「アルプスの展望台」とも言える眺望の良さと、標高1500mを越える視界の開けた道が続く日本離れした景色。
美ヶ原牧場を歩くと、「ここは天国か?」と毎回思ってしまいます。

そんな美ヶ原エリアですが、毎回ビーナスラインを走るだけで、その周りのトレイルにはほとんど入ったことがありませんでした。
行ったことがあるのは、王ヶ頭と、霧ヶ峰(車山)、八島湿原の3つの有名な場所。
それらをつなぐ中央分水嶺トレイルというものがあることも今回知りましたし、それを通しで走れる(歩ける)ということが、今回参加の決め手でした。
これまで何度も自転車や車で走っていたビーナスラインのとなりの、本当の稜線を通しで歩いてみたい。
そして、比叡山50kmを越える、過去最長の80kmを走り切ってみたかったのです。

心構え

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今回は未知の長さというだけでなく、足にも不安を抱えていました。
数週間前に軽く痛めた膝が完全には治っておらず、どうもお皿の下辺りが痛みます。
念のため大会前に整形外科で診てもらうと、「皿の下の軟骨が軟化して痛みが出ている」ということでした。ただ、「それほど痛くなければ走っても良い」と言われたので、「行けるところまで行く」というスタンスで臨むことにしました。
ただ、結果はあまり求められないので、何か他にやることを、と考え、カメラを持って写真を撮りながら走ることにしました。

少し話がそれますが、先日購入したFujifilmのX70が、トレランカメラとしてかなり具合が良いです。

FUJIFILM デジタルカメラ X70 ブラック X70-B

FUJIFILM デジタルカメラ X70 ブラック X70-B

先日の鳳凰三山の時にもこのカメラを持って行きましたが、とにかく写真が美しい。スマホとは明らかに画質が違いますし、色合いもさすが富士、という色を出してくれます。
最近のカメラらしく、Wi-Fiが付いているので、スマホで写真を取り出してすぐにfacebookなどにアップできますし、モニターがチルトできるので、自撮りしたり、地面すれすれから撮影したりもできます。
そして肝心の携帯性ですが、重量340gでコンパクト。ノースフェイスのマンタレイの前ポケットにちょうど入る大きさで、ぎりぎり「走れる」カメラに収まっています。
APS-Cカメラでこの画質を持ちながら、ちゃんと「走れる」カメラになっている、という点で、カメラは数あれど、このバランスを両立出来ているカメラはX70かGRか、というくらいしかないのではないでしょうか。

あ、ちょっと熱くなりすぎました。足の調子が悪いと他に意識が行くのかもしれません。
とにかく、このカメラを持って、「写真を撮りながら走る」ことにしました。目標は「最低20枚」。
80kmなんて、もう完全に「旅」ですし。存分に楽しもう、というわけです。

会場についてみると・・・

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前日に宿に入ってみると、なんと京都から来ていた丸山さんをはじめとするMount Chop系(?)の方々と同じ宿でした。
そういえば奥三河の時も、京都から来ていたNadiの皆さまとたまたま同じ宿だったのですが、たくさんある宿の中からたまたま選んだ宿が同じになる、というのは不思議なご縁を感じます。なんでなんでしょうか。
おかげで毎年来られている諸先輩方に、装備やウェアなどのアドバイスももらえて、随分心強い気持ちでスタートに立つことができました。
「夜は部屋で宴会しましょうね」とお誘いを頂き、「ちゃんと完走してビールで乾杯する」という明確な目標がここでできました。
丸山さんには、Mount Chop、比叡山と、大会後の打ち上げに誘っていただき、毎回最高に楽しい時間を過ごさせていただきましたが、まさか信州に来ても打ち上げに参加できるとは思ってもいませんでした。これは是が非でもゴールまでたどり着きたいところです。

いざ出発

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スタートは朝の4時。朝の4時です。
前日は「どうせ寝付けないだろうな」と思いながら、8時過ぎに布団に入りましたが、数分後には寝ていました。
どうも良い感じで気持ちがリラックスできていたようです。おかげで随分気持ちよく目覚めてスタート。
長いゲレンデを、ヘッドライトを点けて上っていきます。
今回はポールの使用が可能、ということで、初めてポールを持ってレースに出ました。膝痛持ちにはありがたいです。
ポールを2本同時に前について、身体を引き寄せる感じで小走りに上っていきました。スタートポジションも後ろの方からスタートしたので、ペースもほどほどでとても楽でした。
途中で写真を撮ったり、また上ったり、を繰り返しているうちに頂上につきました。

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登り切ってゼブラ山を越えると、ここから分水嶺トレイルに入ります。木も少なく、視界が開けてきます。
ちょうど夜も明けてきて、辺りが明るくなってきます。
空気はひんやり湿った空気。風が高原の風。お花も咲いてます。
ああ、これこれ。気持ち良い。
ところが、下りですでに、ちょっと膝に違和感を感じます。
普段は下りでポールは使わないのですが、今回はフルで使いました。
ポールをちょんちょんと前の方について、膝をかばいながら、慎重に下っていきます。

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八島湿原の手前で、分水嶺から一度外れて、北側の斜面に降ります。
自然保護のためでしょうか。ちょっと残念ですが仕方ありません。
アップダウンが続きますが、下りが遅いのでどんどん抜かれてしまいます。
上りは余裕があるので挽回しようと思うのですが、まだまだ選手が列になっているのであまり前にもいけません。
ということで、ずるずると後退していきます。(最初から後ろの方でしたけど。。)

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距離が長いからなのか、集団で歩いている人たちにはあまり会話がありません。
人がいるのに静か、というのもなんだか寂しいので、ちょっと距離を取って歩きます。

再び分水嶺に戻るとほどなく最初の和田峠のエイドにたどり着きます。
ここまで14km。これまでの大会に比べると、ファーストエイドまでが長いですが、だいたい最初のエイドは通りすぎることが多いので、これくらいがちょうど良い気がしました。
そろそろ空腹を感じ始めていたので、ぱくぱく食べ物を頂き、足をストレッチしてスタート。

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気持ちの良い稜線が続きます。
ずっと霧が出ていて展望はあまりありませんが、これはこれで幻想的でした。
そして何よりも涼しいのが素晴らしい。走るには最高の気温です。

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幻想的な稜線が続きます。
遠くにぼんやりと木が見えて、ふと「思い出の丘」という名前が思い浮かびました。
なんだか、「思い出の丘」という名に相応しい場所だなあ。
あ、そういえば、本当に美ヶ原には「思い出の丘」という場所があったなあ。
確か「思い出の丘」というバス停もあった気がするぞ。
最初に名前をつけた人は、どういう思い出をあの場所に託していたんだろうか。
家族との思い出だろうか、それとも、恋人との思い出だろうか。
・・・などと、どうでも良い思考が頭をめぐります。

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第2エイド、扉峠にたどり着くと、文香さんが待っていてくれました。
ここまでで21km。だんだんと足が痛くなってきました。
もはやさほど急いでもいないので、並んで歩きながら近況を共有。
足が痛くなって来ました。
下りがつらいです。
下りで後ろの人に道をゆずるとどんどん人が来るのできりがないです。
景色は気持ちが良いです。
涼しいのも良いです。
全体的には楽しいです。
などなど。

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道路の上でストレッチして、茶臼山に向かいます。

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しばらく行くと茶臼山が見えてきました。

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見下ろせばよもぎこば林道方面。
この道も、サイクリングの定番ルートです。

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少し急な坂を登りつめると、茶臼山に登頂!
2006mは今回のコースの最高地点です。
もう、下りがつらすぎて、上りは楽しかったことしか覚えていません。

レース中に山頂で記念写真を撮ったのも初めてでしたが、こういうのも良いですね。
他の選手と代わりばんこに撮影し合いました。

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茶臼山を越えると、ついにあの天国エリア、美ヶ原の牧場地帯に出ます。
「これぞ美ヶ原!」という、草原が広がる中を歩いていきます。

霧の中から、美しの塔が見えてきます。
僕、この塔好きなんです。
いろんな人と、鐘を鳴らした記憶があります。

牧場区間は、自然保護のために「ウォーク区間」が指定されていました。
走っちゃだめ、っていうことなんですが、もともとあまり走れていなかったので、特に変化なし。
最後に「ここでウォーク区間終了」という看板が出てきて、「さあ、走ってください」という雰囲気なのですが、どちらかというと「ウォーク区間のままで大丈夫です」という感じでした。
そのウォーク区間で竹トレらん部の方と仲良くなりました。

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牧場を抜けて、第3エイドの山本小屋に到着。
もはや、ゴールにでも着いたかのような気持ちです。
ですが、まだここは26km地点。全体の3分の1です。

ここに来て、足の痛み、特に膝の痛みがかなり出てきました。
特に下りが厳しいのですが、ここから次の和田宿までは1200mを一気に下る、今回最大の下り区間
本当に行けるのか。

補給を取って、一度腰を下ろしてストレッチをしながらここからのことを考えます。
体力的には余裕があるので、とにかく痛みだけが問題です。
気持ち的にも、体力的にもまだ行きたいのですが、痛みだけが不安だったので、痛み止めを飲むことにしました。
本当はこんなに早く飲むつもりではなかったのですが。
痛みだけ止めて走っても、結局足を悪くするだけなので、走る前には、「どうしても、という時だけにしよう」と思っていたのですが。

「余程のことがなければ、薬には頼るまい」と思っていたのにもかかわらず、あまりにあっさり薬を飲もうとしている自分がいました。
自分でもその変化に驚きました。

痛みをずっと感じ続けていたために、神経がすり減っていたのかもしれません。
痛い時間が長すぎて、「一口の薬で楽になれるのなら、楽になってしまいたい」という気持ち。

あるいは、あまりにもたくさんの人に抜かれ続けていたために、どこかで「僕は本当はこんなんじゃないんだ」という気持ちが出てしまったようにも思います。
「他人は他人、自分は自分」と頭では思っていても、実際にそうやって振る舞っていても、心のどこかで「一度くらい自分らしいところを見せてやりたい」という気持ちが出てしまった気もします。

僕の心は弱いです。
「自分は自分」って、思っていたはずなのに。
今回の大会で出た自分の一番の弱さは、足でも体力でもなく、この時の心だと思います。

というのも、結局この時の「薬に頼る」という判断によって、結果的に怪我を悪化させることになり、
翌々日には膝に溜まった水を10cc抜き、しばらく療養生活を強いられる、という結果になったからです。
が、この時はまだ、そんな結末になるとは想像していませんでした。

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山本小屋を発ち、和田宿までの標高差1200mの下りに向かうことにしました。
美ヶ原美術館の横を通り、物見石山に差し掛かると、霧も晴れ、気持ちの良い景色が広がります。
物見石山を過ぎる辺りでふと、足の痛みが引いてきたのを感じました。
上りではほとんど痛みを感じず、さらに下りでも、比較的普通に着地できます。

「行けるかも。」
これなら行けるかもしれません。
「もう、ゴールまで辿り着くのは難しいんじゃないか」、と一度は思っていましたが、これなら行けるんじゃないか、という希望が出てきました。
というか、前半抑えたおかげで、体力にはかなり余裕があります。
そこに来て、痛みさえなくなってくれれば、かなり追い上げられるんじゃないか。
これまで長い距離の大会では、いつも後半にペースを落としてしまっていたけど、初めて「後半追い上げ型」の展開でレースを終えられるんじゃないか。
そう思うと、わくわくしてきました。
ついに自分らしい走りができる時間帯がやってきた!

そうやってペースを上げると、先ほどまで抜かれた人たちに追いつきます。
集団で走っている人たちがいて、なかなか抜くのは難しそうでしたが、ここで勢いを止めたくない、と思い、少し強引に「すみません!」と言って横から抜かせてもらいました。

上りだけではなく、下りも抜かれなくなり、調子よく進んでいました。
「このペースで進み続ければ、ゴールまでにかなり順位を上げられるはずだ」、と思っていました。

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そんな調子の良い時間は、それほど長くは続きませんでした。
痛みが引いてから約30分後、薬の効き目が切れたのか、再び痛みがやってきました。
再び、下りでスピードを上げることができなくなります。
さきほど抜かした集団にもかわされます。
一体なんのために無理して先に行かせてもらったのか。

その集団の中に、知り合いの和地さんがいて、「近藤さん、なんでこんなところにいるんですか?」と聞かれました。
「え、えっと、今日は山を満喫しているんです。」と答えるのが精一杯。
なんだか、自分が情けなくなってきました。

その後はほとんど走れず。
長い下りを、ゆっくり下っていきます。
途中でトレイルは終わり、林道に入ります。
最初は未舗装でしたが、途中から舗装の林道に。
足への衝撃がどんどん増していきます。
路面が固くなるにつれ、どんどん走れなくなり、周りのランナーが調子よく走って下っていく道を、ずっと一人歩いていました。
周りに歩いている人は見当たらず。
歩いているのは自分だけ。

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私設エイドでコーラを頂き、そこからは視界がひらけて里に降りていきます。

「自分は自分」。
余計なことは考えないように。

「これでもう終わったな」。
その考えが、何度も出てきましたが、ひとまず結論は先送りに。
先のことは考えずに、ただ目の前の道を進むことだけを考えて、まずは和田宿を目指しました。

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和田宿にたどり着くと、文香さんが待っていてくれました。
2人でエイドに向かうと、途中の民家で応援をしてくれているおばあちゃんが、「旦那さんきた!」と喜んでくれます。
どうやら、待っている間に仲良くなったらしい。
「まあお茶でもどうぞ」とお茶とチョコレートを出してもらい、一服。
「握手してくれますか」と握手を求められました。

こんな走りをしていても、沿道の方からすると「憧れの選手」という存在なんだな、と思うと、少し誇らしく思えました。
「一緒に写真を撮りましょう」と記念撮影。

おばあちゃんはなんと88歳。
そんなおばあちゃんが、沿道に立って、選手たちに「ハイタッチ」していました。
この日のために、化粧もしたそうです。

これぞ宿場町の心、旅人への心だ、と感じました。

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エイドに着くと、まずはお腹を満たします。
おそばが食べ放題、ということで、何杯も頂きました。
それから、一度横になりたかったので、靴を脱いで寝転びました。
一旦身体を休めて、それからどうするかを考えよう、と。

ごろん、と地面に寝転んで、天を仰ぎました。
レース中に寝るのも初めてです。
いろいろなことが初めてで、新しい領域を楽しんでます。

しばらく寝転んでいると、少し楽になってきました。
そして、再び歩くことにしました。

ここからのルートは、上り基調。
痛み止めを飲んでもまともに走れないことを考えると、ここで終わるという選択肢もあるけど、
もしかしたら上りはある程度行けるかもしれない。
ひとまず次の関門までは4kmしかなく、そこまで行きながら、どうするか考えよう。
そう思って歩き始めました。

歩き始めたものの、もう走ることができません。
水沢峠の入り口まで、しばらく平坦な道が続きます。
ここを他の選手はゆっくり走っていましたが、僕はとぼとぼと歩くことしかできません。

「やっぱりここでやめるのもありかもしれない」。
そう考え始めた時でした。

後ろから「近藤さん」と声がかかりました。
振り返ると、知り合いの石井さんと、そのお友達の佐藤さんの女性二人組でした。
「足、大丈夫ですか?」と聞かれ、「膝が痛いんです」と答えると、「ロキソニン飲みますか?」と心配して下さいます。
「ください」とお願いして、迷わず一錠飲みました。そして予備にもう一錠頂きました。

佐藤さんが、「薬を飲んだら回復して、後でまた追いつかれるかもしれませんね」と笑って言いました。
石井さんは、ロキソニンを飲んでいる様子を、少し心配そうに見ていました。

お礼を言って二人と別れ、再び歩き始めました。
しばらく行くと、水沢峠への上りが始まります。
久しぶりに、トレイルの上り道です。

上り道に入ると、足の痛みを感じなくなりました。
久しぶりに思い通りに歩けて、前の人たちをどんどんかわしていきます。
どうやら上り道は行けるようです。

「もう、このままゴールまでずっと上りが続いてくれたら良いのに」と思いました。
しかし、峠はやってきます。
水沢峠を越えると、次の関門の入大門まで下ります。

ところが、この下りに入ってもあまり足が痛みません。
どうやらロキソニンが効いてきているようでした。
結局それほどペースを落とすことなく下って行くと、先ほどの石井さんたちに追いついてしまいました。

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「いよいよ、入大門でリタイアかな」と思っていたというのに、
「復活しちゃいました」などと言いながら、一度も止まらずに関門を通過し、そのまま長門牧場に向かう長い上りに入りました。
「上りだから行けるだろう」と思っていました。

ここからの上りは、長い長い林道の上りです。
10kmも続く、ゆるやかな上りの林道で、変化がなく精神的にきついです。
この上り、さすがに走ることはできませんでしたが、体力には余裕がありました。

そこで、「早足で歩く」ことにしました。
ポールを足と一緒に右、左、右、左、とつきながら、速いピッチで歩いていきます。
皆さん上りでは随分疲労を感じているようで、この区間で20人ほど順位を上げました。

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そして長門牧場へたどり着きました。
10kmの上りを上りきりました。
道端には倒れている人もいました。
牧場の反対側には、長門牧場のエイドが見えます。
すぐそこにエイドが見えるのですが、ここから2.5kmも遠回りをして、やっと反対側のエイドに辿り着く、というルートです。

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2.5kmの迂回ルートに入ると、ゆるい下りが始まります。
この下りに入った時に、もはや足が全く下れない状態になっていることに気づきました。
走ることはおろか、まともに歩くこともできません。
ポールをつきながら、恐る恐る歩くことが精一杯。

先ほどまでの上りの勢いはどこに行ったのか、というくらいの、ほぼ止まっているようなペースになりました。

「やめよう」。

足をかばいながら恐る恐る歩いているその時、空からタオルが投げられ、自分の肩にかかったかのように、ふと、そう思いました。
一度そう思ってしまうと、まるで迷いが出ませんでした。

「もう十分だろう」。

ずっと先送りにしていた結論でしたが、ふと出てきた時には、もう決定事項のような気がしました。

「ふう。ここで終わりだ。」

レースを終えることにしました。
そう決めると、まずはその場で一度ストレッチをし、来た道を引き返し始めました。
反対側に見えるエイドまで、ショートカットできる道があるので、そこまで戻ることにしました。

ちょうど戻っている間に、佐藤さんと石井さんとすれ違いました。
2人それぞれに、「僕はここで降ります。ぜひ完走してください」と思いを託し、握手をしました。

結局この2人は、そのままゴールまで辿り着きました。
佐藤さんはさすがのウルトラ経験者で、そのままペースを落とさずゴール。
石井さんはこれまで僕と同じ比叡山50kmが最長距離だったのですが、足裏の痛みに耐えて制限時間15分前にゴール。もうその時にはもう、暗くなっていました。
4時から歩き始めて、あの暗い山道を、最後まで歩き通したのかと思うと、尊敬すると同時に、そんな体験を自分もしてみたかった、と思いました。
長いトレイルには、短い距離にはない楽しみがやはりあると思いました。

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45kmコースで使われる、ショートカットルートからエイドに向かうと、文香さんが待っていてくれました。

「ここでリタイアするわ」。

レースを降りる意志を伝えると、突然、身体に力が入らなくなり、涙がこみ上げてきました。
草むらに腰を下ろしました。

これでもう、つらい思いはしなくて良い。
悔しいけれど、薬を飲んでも歩けないんじゃ、もうどうしようもない。
これまでたどり着いたことのない、57km地点まで辿りつけたんだし、満足しただろう。
もう良いよ。大丈夫だよ。

少し座っていると落ち着いたので、再び立ち上がって、長門牧場のエイドに向かいました。
スタッフの方に、「リタイアします」と告げました。
牧場で作られたヨーグルトと牛乳を頂き、小さな女の子からカロリーメイトをもらって食べました。

気持ちの良い草むらに座りこみました。
最後の23kmに向かう選手たちを見送りながら、僕のレースは終わりました。