京都から三重の実家まで、トレイルを走ってみた

ランニングをするときは、Stravaにログを投稿している。走った場所が線になって、地図上に表示される。
このStravaには、有料会員限定のパーソナルヒートマップという機能があり、これまでに走ったすべての道を、地図上に重ねて表示させることができる。これがなかなか面白い。

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こうやって、自分が走ったルートに色がつく。本格的に走り始めた8月頃は、鴨川に少し色が付いている程度だったけど、あちこち走り回るうちにだんだん色が付いている場所が増えていった。この塗りつぶしがなかなか楽しい。それで、どんどん走ったことがない場所を走ってみたくなってくる。余談だが、Stravaを使っている人でも、この機能を知らない人が結構いて、教えてあげるとみんな自分の地図を見たくなってプレミアムに加入する、ということが続いている。自分のプロフィールページに表示できるとか、もう少し目立たつようにしたら、それだけでプレミアム会員も増えて良いんじゃないか、と思う(思ったので、Stravaにフィードバックを送っておいた)。

で、最近は朽木のFairy Trailの下見で朽木のトレイルを走ったり、花背トレイルランを走ったりして、自宅から離れた場所も色が付き始めた。そうやって走った場所は、どうしても線が飛び地になってしまう。なんだか可哀想だ。

それで、こうやって離れ離れに色がつくんじゃなくて、なるべくつなげて色を塗りたいな、と思いながら地図を眺めているうちに、そうだ、京都の自宅から三重の実家まで走ってみたらどうだろう、ということを思い付いた。

いや、こう書くと、まるでStravaの地図を塗りつぶすためだけに走ったかのようだ。決してそれだけではない。

トレイルランの世界に足を踏み入れると、否が応でも(?)ウルトラトレイルの世界が気になってくる。UTMB(モンブラン一周レース)をはじめとする、100マイルの大会など、世の中には100kmを越えるコースを、夜も徹して走り続けるウルトラトレイル大会がごろごろしている。

そして、なぜかトレイルランを始めた人は、みんないつしか、ウルトラトレイルを目指すようになる、ように見受けられる。

これはなかなか不思議な現象である。なぜかというと、たとえばランニングを始めても、だいたいフルマラソンくらいまでが目標になり、それ以上の距離のウルトラマラソンへ皆が自然に移行していくか、というとそうではない。僕だって、フルマラソンくらいは挑戦してみても良いかな、と思うが、それ以上長い距離を、マラソンで走りたいか、と言われると、「ずっとアスファルトだと足が痛そうだな」くらいの感じで、それほど強い興味をそそられるわけではない。

ところが、トレイルランとなると、なぜかそこがぐっと興味が湧いてくる。ロードをランニングするのに比べ、トレランは同じ距離でもその1.5倍は大変だ、と言われるのに、なぜトレランになると長い距離に挑戦したくなるのだろうか。

しかしよく考えてみると、トレイルにはなかなか飽きが来ない。1日中道を走りなさい、と言われたら、ちょっと勘弁してください、という気がするけど、1日中山を走りなさい、と言われたら、それならやっても良いかな、と思う。この差はなんだろうか。山はやはり、複雑で、歩いているだけで楽しい、ということなのではないかと思う。情報量が多いのだ。

さて、そういうわけで、まだこれまでに、25kmの大会を1回完走しただけだというのに、フルマラソンの距離を走ったこともない、というのに、マラソンを越えるウルトラトレイルの世界にどうしても興味が向いてしまうのだ。

トレイルランの雑誌などを読んでいても、UTMBや、UTMF(富士山一周レース)の体験談などがよく出てくる。こうした大会では、160kmを走るために少なくとも一晩は夜通し走ることになる。その様子を読んでいると、だんだん身体の限界が訪れて、眠くなったり、足が動かなくなったりするものの、そこからさらに自分の知らなかった力が出てきて、限界の向こう側に行き、そして夜を超え、朝を迎えていく、というようなストーリーが何度も出てくる。

そんな、自分の体の限界を超えた世界、はたまた、夜を越えて行く世界、を、一度は覗いてみたい、と誰でも思うだろう(ほんとかw)。

夜にしても、これまでほとんど夜の山に入ったことは無かった。少し興味が湧いて、近くの山を軽く走ったことはあるけれど、夜を越えていくような体験はしたことがない。何となく、夜の山には怖さや畏れを感じていたし、タブー視していた。高校のワンゲル部では、明るいうちに行動を終えるのは山の鉄則だ、と教えられた。

それが、軽装の装備で、夜の山に入っていくわけである。なんとなくその行為は、夜の神社に入ってはいけない、と感じるのと同様の、自然への畏怖を感じる心を裏切る行為のようにも思える。しかし、その畏れを心に保ちながらもまた、しっかりと自分を鍛え、その世界でも山と対峙できる存在になりたい、という興味もある。

思えば、比叡山修験道を走る修行僧や、神道を極めようとする神職家もまた、夜の山に入り、山と一体になりながら、その向こうの世界へと迫ろうとする。夜の山は畏れを抱くべき対象ではあるけれど、それは実際に危険であり、気軽に行くような場所ではないことは確かだが、また逆に、そこに入れるのは、心身を鍛え、山と向き合う力のある人間にだけ許される行為である、とも言える気がする。

山を走り、自分の心身を鍛え、そして次の段階として、夜の山にも入っていってみたい、とやはり感じてしまう。

これまで、トレーニングや大会では25kmが最長距離だったけど、それよりも長い距離、長い時間、しかも夜も含めて、山を走り続けてみたい。もっともっと走って、真っ白になってみたい、という気持ちがむくむくむくむくと立ち上がり、抑えきれなくなってきていた。

そういう背景もあって、Googleマップの航空写真をぼんやり眺めていた時に、そうか、京都から三重県まで、うまくつなげばずっと山の中のトレイルを走りながら、たどり着けるのではないか、と思ったのだ。自分の中に、一本の道が見えてしまったのだ。

さっそくもう少し詳しく地図を見ながら、トレイルのルートを作成してみた。

まずは京都市から大文字山に入り、そこから音羽山に向かう定番のトレランコースを進む。
そこから瀬田川に向かい、滋賀県に入ると湖南アルプスを東に進む。
信楽付近には小さい山が連なっており、いくつか選択肢があるが、ここは東海自然歩道を基本にしながら進むのが良さそうだ。
信楽から柘植までは、山が低くなるが、県境には未舗装のトレイルが上手に連なっているように見える。
さらに、柘植から先は、鈴鹿山脈が連なっており、険しい山道が延々と続く。
鈴鹿山脈を全山縦走すると、直線距離でも50kmを越える長さがあるが、実家のある菰野町はちょうどその半分くらいのところだろうか。そこまで縦走して、町に降りれば実家である。

ちなみにこのルートを作成しながら、そのままぐるっと、滋賀県を一周するコースを作っても面白そうだ、という気がしてきた。

鈴鹿山脈を全山縦走し、そこから伊吹山に登り、余呉トレイルを走り、さらに高島トレイルを走り、
朽木のトレイルから比良山系に入り、最後は比叡山を越えて京都に戻る。

数々の名トレイルが連なる、なかなかのコースである。
滋賀県一周トレイル、なかなか面白いのではないか、という気がする。

が、そんな、4,500kmくらいありそうなトレイルの構想はちょっとしまっておいて、ひとまず三重県までの、百数十キロを走ってみよう、と思ったのである。

前置きがとんでもなく長くなってしまったが、そういうことで、10月31日(土)に、前半の柘植駅まで、11月3日(火)に後半の実家までを走ってきた。(つづく)

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