京都から三重の実家までトレイルを走ってみた - 京都から柘植まで2(回想録)

この連載は、2015年10月31日、11月3日の2日間で、京都から三重県菰野町までトレイルをつなげて走った記録です。
第1回:京都から三重の実家まで、トレイルを走ってみた - Tender is the Mountain
第2回:京都から三重の実家までトレイルを走ってみた - 京都から柘植まで1 - Tender is the Mountain

ひょんなことから、最後まで書いていなかった記録を仕上げることになりました。
記憶を掘り起こしながら、三重までの道のりを振り返ります。

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大戸川沿いの道に出ると、ここからしばらくはロード区間
この道は、自転車のトレーニングでよく冬に走りに来た道。標高が低くて雪が積もらないので、北山が雪に閉ざされる季節には、よく信楽まで走りに来たものだ。

そしてこのあたりの集落は、大戸ダム建設のために集落ごと立ち退いたあたり。せっかく立ち退いたのに、その後ダム計画が中断して、何のために立ち退いたのかよく分からなくなっている。苦渋の決断で故郷を捨てた方々の心境を思うと、複雑な気持ちになる。

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信楽が近づいてくると、出た!たぬき!さすが信楽

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たぬきでかい!

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たぬき地帯を抜けて、国道に出ると、今日2回目で最後のコンビニ登場。
すかさず補給をします。

時間は4時半すぎ。そろそろ日が暮れようとしている。
この時点で距離が約50km。ゴールの柘植まであと30km。
ナイトランは必至。もう、焦っても仕方がないので、割り切って休むことに。

身体のエネルギーが切れてきたのか、立ち止まると寒く感じるようになってきた。
外の駐車場に出るのも寒いので、コンビニの床に座らせてもらって、カップラーメンをすすった。
ああ、しあわせ・・・。
ふと、なんでコンビニの床に座ってラーメンすすってるんだろう、と我に返るが、気にしない気にしないw

しばらく身体を温めて、再び外へ。
ウィンドブレーカーを羽織って、走り始める。いよいよ、夜のパートに入っていく。

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紫香楽宮跡駅の横から信楽高原鐵道の線路を渡り、東海自然歩道へ入る辺りで、日が落ちた。
そこから小さなピークを越えていく。
上り道から振り返ると、信楽の町の向こうに、夕焼けが見えた。

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自分は一人、夜の山にいる。
しかも通ったことのない道を、進んでいる。
自分が置かれた状況を考えると、ふと、なんでこんなことをしているのだろう、と思う。
誰に頼まれたわけでもないのに、一人で、誰もいない山の中を走っている。
もう暗くなるというのに、まだ30kmも先を目指して、暗闇に入ろうとしている。
気温はだんだん肌寒くなってきている。

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僕がトレランに出会わなかったら、決してこんなことはしていなかっただろう。
不思議なものだ。
山はいつもそこにあったのに、いつでも走りに来れば来れたのに、夜に走ろうと思ったことはなかった。
こんなに長い距離を走ろうと思ったこともなかった。

ところが、世の中にトレランというスポーツが広まって、夜を徹して走る大会がたくさんできた。
世の中には、夜の山を走る人がたくさんいるんだ、ということを知ったことで、僕は今こうして、夜の山を走っている。

ちょうど今日は、関東でハセツネが開催されている。
15時にスタートして、70kmを走る大会では、全員が夜の山を走ることになる。
今まさに、この時間、奥多摩の稜線を、何千人もの人が走っている。
友だちのじろうちゃんも走っている。

それを思うだけで、力が出てきた。
自分が一人ではないと思えたし、夜の山の怖さが和らいだ。

山は何も変わらない。僕の身体も変わっていない。
ただ、考え方が変わっただけだ。
「夜の山を走ることもあるんだよ」「みんな今、走っているんだよ」という、
概念が変わっただけだ。

それだけのことで、今まで思いもしなかったようなことを、僕はしている。
今まで怖くてやろうとも思えなかったことに、一人取り組んでいる。
不思議なものだ。

ちょっとした考え方の違いが、こんなにも行動を変えるのか、と思うと同時に、
人間は、いかに考えに行動を縛られているのだろうか、と感じた。

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小さなピークを越え、新名神高速道路としばらく並走し、
そこから南下し始めたあたりで、いよいよ辺りは真っ暗になってきた。
ヘッドライトの灯りを頼りに、進んでいく。

東海自然歩道なので道は整備されているのかと思っていたが、このあたりは想像以上に道が荒れていた。
小さな川に落ちないように気をつけながら進み続けると、杉谷の集落に出る。

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そこから2つほどため池を越えて山に入ると、甲賀の里を見下ろせる展望台に出た。
もちろん辺りは真っ暗だったが、彼方に甲賀の集落の灯りが見渡せた。

このあたりからは、集落に出ては、裏山のような小さな山に入り、また集落に出る、という道が続く。
昔、甲賀忍者伊賀忍者がいた地域だから、この道も、忍者が走り回っていたのだろう。
徳川家康本能寺の変のあとに伊賀越をしたのも、似たようなルートだったのかも知れない。

決して標高の高い山や、豪快な景色などはないが、そういう歴史を感じながら、たくさんの人が歩いたであろう里山の道を歩くのも、楽しいものだ。

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三重県に入る標識が現れ、ここからは三重と滋賀の県境を行ったり来たりしながら進んでいく。
ついに三重県に入った。こんにちは、三重県

走った距離が60kmを越え、70kmを越えていく。
もう、足はかなり疲れている。左足の甲が、紐にあたって痛む。
トレイルから舗装路に出ると、一度靴を脱いで地面に座り、休憩をする。

そうやって足をかばってはいたが、意外と走り続けることはできた。
こんな長い距離を走ったのははじめてだと言うのに、「もうこれ以上は走れない」というほどでも無い。

優しい里山のトレイルが続いて、それほど険しくなかったことも良かったのかもしれない。
舗装路では足が痛かったが、トレイルの区間は足に優しかった。
上り下りがあろうが、とにかくトレイルが続いて欲しい、と思いながら進み続けた。
この優しいトレイルを、また明るい時間に走りに来たいと思った。

辺りは暗く、もちろんトレイルを歩いている人など一人もいない。
暗い道を一人で黙々と走り続けていると、ようやく「余野公園」までの距離が出てくるようになった。
余野公園は、このトレイルの出口で、ゴールの柘植駅のすぐ手前だ。そこまで出てしまえば、もうすぐゴールである。

「余野公園5km」「余野公園3km」という看板を見るたびに、「鴨川で言えば北山通りから家に帰るくらいだ」「もう北大路まで来たぞ」と思いながら進むが、この距離がなかなか思ったように減らない。
鴨川を走っているのとはわけが違う。
ゴールを意識し始めてからが、むしろ長く感じた。
まだか、まだか、という気持ちがどうしても出てきてしまう。
これが最後の休みだ、と思ったものの、なかなかたどり着かず、また休んだり、ということを繰り返しながら、
いよいよ最後の下り道を下っていくと、山から出た。ようやく余野公園だ。やった!

ここから柘植駅までは、直線距離で数キロしかない。
国土地理院には、山の中を抜けるトレイルが記されているので、その道を進もうとするが、入り口は封鎖されていて山には入れなかった。どうやら道は無いらしい。

道路を通って迂回しようとすると、6,7kmはありそうだ。
さすがにもうそんな元気は残っていない。
悩んだ末に、某、鉄の道をこっそり通らせていただいて、最短ルートで柘植駅に到着。

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最後はちょっと裏技的な感じだったけど、とにかくゴール!!!
いやー、長かった〜!

ゴールした時間は21時21分。
朝の5時半に出発したので、スタートからは15時間50分。
距離は80km。
こんなに長い時間走ったのはもちろんはじめて。
こんな長い距離を走ったのもはじめて。
ほんと長かった。

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そして、ゴールしたところで誰もいない、というこの孤独感w。

電車の時刻を確かめ、トイレで身体を洗う。
服を着替えて、ジュースを2本も買い、電車へ。

一人、メロンソーダとチョコレートの味を噛みしめながら、家に戻った。

確かに大変だったけど、なんとかなるものだ、とも思った。
一応電車のある時間に、予定通りのコースを走り通すことができた。
これなら、後半も行けるかもしれない。

3日後の後半ルート、もっと険しい山が続く鈴鹿山脈の道に想いを馳せながら、一旦家に戻った。(つづく)

8th Kyoto Mount Chop!

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やってまいりました。秋のKyoto Mount Chopの季節が。
3月の比叡山を走る春大会に続いて、北山を走る秋大会です。

何と言っても、はじめて表彰をしてもらえた思い出の大会です。
そして、3月の大会がきっかけで、たくさんのトレラン仲間と知り合いになれました。
主催者の丸山さんは子どもの小学校も同じで、運動会で顔を合わせたりするくらいのご近所さんです。
そんなMount Chop、もちろん秋も出たい!

出たい!、のですが、エントリー受付の9月1日の時点では、骨折でまだ走ることもできませんでした。
11月にちゃんと45kmも走れる身体になっているのかが分かりません。
熾烈なクリック合戦を勝ち抜いてエントリーしておいて、当日キャンセルするのも、エントリーできなかった人に申し訳ない。
どうしたら良いんだ!

しばらく悩んでいたのですが、ある時、「そうだ、マイルドコースにエントリーしよう!」というアイデアを思いつきました。
45kmほどのワイルドコースに対して、マイルドコースは15kmほど。
療養期間が長引いたとしても、さすがに11月になれば15kmくらいは走れるだろう。
そうすればドタキャンで迷惑かけることもないし、これは良いアイデアだ!と思ってマイルドにエントリーしました。
・・・と、この時は良いアイデアだと思ったのですが、結果的には、それはそれで別の迷惑をかけたかも知れません。(その内容はのちほど。。)

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今回は二宮さんもエントリー。
二宮さんはもちろんワイルドです。
チョーップ!

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スタート時間が近づくと、丸山さんたち運営スタッフさんが登場。

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ローカルの草レースとはいえ、たくさん集まってなかなか賑やかです。

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選手宣誓から恒例の寸劇(?)が始まります。
今回は、丹羽薫さんが呼び出されて前へ。

「ねえちゃん、上から下までサロモンで決めて、初心者やろ。コースロストとかしたらあかんで。」
とかいじられていて、すごかったです。
(最後は、「あなたが世界の丹羽薫さんですか!」みたいなオチがついてましたがw)

そして、いつものように(?)、寸劇をやっている間にスタート予定時刻を過ぎてしまい、
10分遅れでスタートしました。
(相変わらず良い感じでゆるいですw)

スタート後も、3回ほど信号で止まり、そのたびにばらけかけた集団がまた1つに。
信号のたびにレースが振り出しに戻る大会も珍しいですよねw

そんな感じで3kmほどロードを走り、ようやく向山に向かうトレイルに入りました。

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(写真:最勝寺進さん)

前回の優勝者、岡見さんは、今回はトリオで出場されていました。
その岡見さんたちのチームが、スタート直後から先頭を引っ張ります。
最初は何人か一緒に走っていたのですが、トレイルに入ってしばらくすると、岡見さんたち3人と、僕だけになりました。

向山の登りで一度僕が先頭に出たりもしましたが、下りが足をかばいつつだったのですぐに追いつかれ、
ふたたび3人の後ろに。

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ゆるい上りは走り、きつい上りもかなりのペースで歩き、下りはどんどん走ります。
ついていくのがやっとでした。
僕は15kmしか走りませんが、3人は47kmの道のり。
こんなペースで47km行けるなんてすごいです。
ずっとこれくらいの速さで走れるようになりたいものです。

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ほいっ、ほいっ、ほいっ。
遅れないように、ついていきますよー。

そして、二ノ瀬ユリの分岐まで来ると、マイルドコースは折り返しでお別れです。

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みなさん、長い道のり、がんばってくださーい!
(はーい、とお返事)

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(ここまで写真:最勝寺進さん)

さて、ここからは僕一人です。
ゴールに向けて、行ってきます〜。

身体の方はというと、概ね軽快に走れているのですが、
下りで左膝に少し痛みを感じます。

それから、この数週間、左足の薬指と中指の間の付け根辺りが痛むのですが、
どうやらモートン病というらしく、
どうしてこうも、次から次へといろいろな場所が痛くなるのかなと思うのですが、
そこもちょっと痛みます。

というわけで、下りはあまり無理をせず、ゴールに向かいました。

二ノ瀬ユリを下り、再び夜泣峠への登り。
夜泣峠と向山を登り返せば、上りは終わりです。

しっかり出し切ろう、となるべくペースを落とさないように登って行くと、
大きな木にテープが巻いてあり、よく見ると、
「カタツムリの渦巻きは、右巻きと左巻き、どちらが多いでしょう?」
というクイズが書いてあります。

え?
どっち?

これはなんだろうか、低気圧の雲が北半球は反時計回りになって、南半球は時計回りになるみたいに、
北半球と南半球で分かれたりするのかな?

どうなんだ!どっちなんだ!と気になるものの、その後答えは一向に示されません!
がー、気になるー!

なんという残酷な応援なんでしょうかw

結局コース上では、答えは与えられませんでした。(僕が見た限り)
そこで、今調べました。調べましたよ!

カタツムリには右巻き(右旋:dextral)と左巻き(左旋:sinistral)があり、上から見て、渦の中心からどちら回りに殻が成長するかで決められる。実際に区別をするには、殻頂を上にして殻の口を自分の方に向けたとき、殻の口が右にあれば右巻き、左にあれば左巻きとするのが簡単である。日本産のものでは種ごとに巻きの方向が遺伝的に決まっており、大部分の種は右巻きであるが、ヒダリマキマイマイなど少数の左巻き種がおり、キセルガイ科のように科全体が左巻きのものもいる。
巻きの方向を決めるのは一つの遺伝子によるとされ、この遺伝子が欠如もしくは機能しない場合、その種本来の巻き方向とは逆に巻いた逆旋回個体となるという。実際に逆旋個体が発見されることもあるが、きわめて稀な例である。通常、逆旋個体は体の構造も逆で、交尾孔も右旋個体は右側、左旋個体は左側に開く。多くのカタツムリでは対面しながらすれ違う位置で交尾孔のある側を相互に合わせるため、巻き方が逆であると交尾が困難となり種分化がおこる場合もあると考えられている。外国にはポリネシアマイマイやマレーマイマイのように同一種内で右巻きと左巻きの両方が普通に出現する種類もある。このような両旋型の種の交尾は、他方の殻の上にもう一方の個体が乗るマウンティング形式であるため巻き方の違う個体同士でも交尾が可能であるという。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%83%84%E3%83%A0%E3%83%AA

ほほー。ほとんど右巻きなのに、稀に左巻きの種がいると。
種ごとに分かれているんですね。へえー。

ということで、ようやく疑問が解決しました。ほっ。

この難問クイズ、身体の疲れも一瞬忘れ、考え事ができましたので、ある意味効果的な応援だったかも知れません。

(後日談:クイズを書いた中村さんがこのブログを読み、「答えは夜泣峠を越えて一つ目の左の木に書きましたよ!」と教えてくださりました。なんと!見落としていたんですね。。失礼しました!)

そんなこんなで、夜泣峠に辿り着きました。
僕が夜泣峠を越えて向山に向けて入ったところで、向かい側からスイーパーの方々と、最後尾のランナーさんがやってきました。
もしかしたら会えるかな?と思っていたのですが、間に合いました!うれしい!

「え、もう戻ってきたんですか?」
と聞かれて、皆さん道を譲ってくださり、なんとハイタッチ。
「がんばってください!」
「お互いがんばりましょう!」
これは嬉しかったです。

ここから向山はすぐ。
頂上を越えればあとは下るだけです。

トレイルを下りきり、最後はロード3km。
まだ力も残っていますので、ちゃんと出し切ろう、と、キロ4分20秒ほどのペースで走りました。

ゴールに着くと、スタッフの方が何か他の作業をされていました。
「すみませんー、帰ってきました〜」
と声をかけると、
「あ!もう帰ってきたんですか!」
と言われ、慌ててタイムを記録。
「すみません、もう一度走ってきてください」
となり、写真撮影のためにゴールシーンのやり直しw

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ゴールテープを貼ってもらい、改めて今度はちゃんとゴールテープを切ってゴール!
タイムは1時間48分でした。

飲み物とお菓子を頂き、服を着替え、後続の方々のゴールを待ちます。
…が、30分ほど経っても姿が見えません。
結局、33分差で、女性の方が2位でゴールされました。

はい、要するに、このクラスは、そういう設定のクラスだったのです。
大会概要にも、ちゃんと

マイルドコース
トレイルランニング未経験者、初級向けお試しレース

http://kyotomountchop.skr.jp/syumoku/

って書いてありました。
ということで、かなり空気を読まない感じになってしまいました。(すみませんすみません。。)

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夜は恒例の打ち上げ。
いつものごとく、大盛り上がりです。

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「京都、マウント、チョーーーーップ!」
ということで、秋の大人の大運動会、という様相を呈したKyoto Mount Chop。
今回も楽しませて頂きました。ありがとうございました!